世界の灰色の部分
「本気ですよ。あたし、家も、学校も、仕事も大っ嫌いなんだもん。だから彼だけいればいいの。彼と遠いとこに行くの」
「ふざけるなよっ」
突然先生がわたしの声を遮って大声を出したので驚いた。わたしは勝手にこの人を、怒鳴ったり感情を表に出したりができない人だと思っていたから。
「そんなことしたら、周りの人間みんな心配するだろ!みんな悲しむだろ!」
「誰も悲しまないわよ!悲しむ人なんかいないからかけおちしたくなんのよ!」
「じゃあ俺が悲しむって言ったら、君はかけおちやめるのか!?」
一瞬だけ、わたしは言葉につまった。
「あたしのことなんにも知らないくせに、適当なこと言わないで!!」
お弁当に蓋をして、素早くしまって、わたしは逃げるようにしてその場を出た。
先生がどんな顔をしていたかわからない。

その日もう先生の授業はなかったため、先生と会うことはなかった。
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