世界の灰色の部分
「いつから知ってたの?」
甘ったるい桃の味を一口飲み込んで、わたしは先生にそう尋ねた。
あれから、今日で一週間になる。両親とわたしは未だに口をきいていなくて、わたしは部屋に篭るかただぶらぶら目的もなく町を歩く、というような毎日を送っていた。こんな毎日がこれから延々と続いていきそうな、そんな思いすら浮かんでいた。
だけど今日、なぜか急に思いたって先生に連絡をつけ呼び出したのだ。
「最初から、かな」
「最初からって?初めて店で会って、そのあと学校へ来てわたしを見てすぐってこと?」
「うん、まぁ、そういうことになるのかな」
「じゃあ、好きな女の子って言ってたのは…?」
自然とその質問が口から出た、自分自身に驚いた。先生は少し照れくさそうに答えてくれた。
「もちろん本気だよ」
「そっ、それは学校でのわたし?それとも、キャバクラでのわたし?」
「何いってるんだい、君は君だろ?」
優しい声だった。とても、とても。
だけどその直後の言葉で、そんな気分も吹っ飛んだ。
「そして、瑞穂ちゃんは瑞穂ちゃんだ」
「えっ…」

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