世界の灰色の部分
13
滑り台すらないような街角の小さな公園に、わたしと先生はいた。
「はい」
「ありがとう」
ベンチに座って、先生が買ってきてくれたネクターを受け取った。先生もわたしのとなりに座り、コーヒーの栓をあける。
あの日、あの後。
警察がやってきて、店は大騒ぎとなった。わたしはあっというまに高校生ということがバレ、親と学校に連絡された。店はわたしを高校生だと知らずにつかっていたと言い通したが、結局一週間の営業停止となった。田口も少女売春未遂や暴行にあたるとして警察に連れていかれたが、わたしも先生も訴えなかった。学校も店も田口も事が表沙汰になるのは避けたかったのだろうし、後になってみれば、あれはわたしが悪いのだと思うから。
先生は生徒がキャバ嬢なんかをやっているのを知りながらすぐにやめさせなかったとして、半年間の謹慎が決まり、わたしは学校を退学となった。
警察署につれて行かれたわたしを迎えにきた両親は、ひたすら無言だった。父親から殴られるくらいは、母親が失神を起こすくらいは覚悟していたのに、なのに彼らは、何かを堪えた顔をしたまま、わたしに何も言わなかったし訊かなかった。ただ家に帰るまでの車の中で、後部座席に座っていたわたしにずっと聞こえていたのは、助手席に座る母のすすり泣きだった。
< 60 / 80 >

この作品をシェア

pagetop