【短編】運命の人
思い出したらキリがない。
『――間もなく猪苗代駅に到着します……』
過去を回想していると、もうすぐ目的地に着くアナウンスが耳に入った。
電車がホームに入り、じわじわと速度を落とし、ゆっくりと停まる。
人波に呑まれるようにして、あたしは電車を降り、改札口へと向かった。
改札口を出ると、朝の慌しさから一気に解放された気分になって、気が緩んでしまう。
コーヒーでも買って行こうかな……。
そう思って、駅前のコンビニに向かおうとしたとき。
右手に持っていたバッグが、突然グイッと強く引っ張られた。