【短編】運命の人
「………っ!?」
ビックリすると同時に、自分の右手にバッグがないことに気づく。
咄嗟に前を見ると、あたしのバッグを持って走り去る男がいた。
「どっ、泥棒っっ! 誰かっ……、その男捕まえてーっ!!」
大きな声で叫びながら、あたしは男を追って猛ダッシュする。
冗談じゃない。
あのバッグのなかには、あたしの全財産が入っているのに!
しかも今日は、実家からの仕送りがある日で、通帳も入っているのに!
キャップを被り、全身黒ずくめの服を着ている男。
顔までは見えない……。
しかも、足速いし……っ!