【短編】運命の人
「誰か……っ! 捕まえて……っ」
男がビルの角を曲がった瞬間。
長身の男の人が、そいつを追いかける姿が見えた。
よかった……。
助けてくれる人がいた……。
あたしが遅れてビルの角を曲がると、男の人とスリがもみ合っていた。
やばい……、やばいよ。
殴り合いとまではいかなかったけれど、もし、刃物でも持っていたら……。
嫌な予感がして、あたしは大きな声で叫んだ。
「おまわりさーん! こっちです! 早くーっ!」