見えない翼
「どいてくんない?
ってか男押し倒すって
あんたどんだけよ。」








照れ隠しのためにわざときつくなる俺の口調。







こんなこと言いたい訳じゃねぇのにな。







すると女は悲しみをかみ殺したような表情をし

一言「すみません。」と言ってくるっと踵を返しゆっくり俺のもとから離れていった。







ドク ドク ドクっ







歩いてく彼女の後ろ姿を片目に







少し動悸の早い心臓を左手で押さえる。






火照った頬が少し熱い。






「こんなの…
こんなの俺じゃねぇ……。」






誰も居ない廊下に
俺の言葉が静かに響いた。


< 10 / 13 >

この作品をシェア

pagetop