Rainy-Rainy
−Yu-ri−
「恭ちゃん…」
アモーレに戻る途中、広げたビニール傘越しに、真っ黒い空を見上げたら、自然と彼の名前を呼んでいた。
「クスクス…」
大好きな人の名前が、自然と口に出してしまう。
そんな自分が、すっごく乙女チックで笑えてしまった。
私は、恭ちゃんが好きだ。
好きになったのが、いつなのかも分からない頃から、ずーっと変わらずに好きだ。
両親よりも優しくて、漫画より面白くて、どんな男の人より格好良い。
そんな風に、ちょっと大袈裟に美化してしまうくらいに、大好きなのだ。
でも、恭ちゃんは違う。
恭ちゃんが好きな人は、いつだって私じゃない。
小学校の頃は、クラス一可愛い子。
中学校の頃は、部活の先輩。
高校の頃は……言うまでもないよね。
今でも引きずっている、久我先生。
すぐ隣にこんな可愛い子がいるのに、恭ちゃんは少しも気付かない。
「………馬鹿だからなぁ、クスクス」
でも。
でもね、本当は別に私に振り向いて貰わなくたっていいって、ほんの少しだけ思ってる。
それが悔くないかって言ったら、勿論ウソになる。
けど、私なんかの気持ちに答えるより、恭ちゃんには、恭ちゃんの気持ちを叶えて欲しい。
それが私の望み。
だから、恭ちゃんが誰かを好きになったのなら、私は絶対それを応援するつもり。