美女で野獣
何処からかジイがボクの制服を持ってきたので、手早く袖を通し、歯を磨く
「隼人様、おくります」
ぼくはけっこうですといい、すたすたと歩きはじめる。
なんだか落ち着かない
「はーやーとーくぅんッ♪」
聞き覚えのあるリネンのような柔らかい声が聞こえた
「…ヨシノさん」
長い廊下の向こうから保健室の先生でもあり、紀奈のお姉さんでもあるよしのサンが歩いてくる
「一緒に学校いこっか!」
「はい」
朝からテンションが高いヨシノさん
香水の匂いが心地いい
「泊まったのね♪」
にやっと笑うヨシノさん
「…泊まらせていただきました」
「隼人君なら可愛いし、ヨシノ大歓迎だよ♪」
「…何がですか?」
「なにって…紀奈のお婿さんだよ!」
「?!」
はひ…?
「ンナナナ何いってるんですかッ!?」
「だってぇ~紀奈との結婚とか考えてるでしょ?」
けっこ……ん
ボクは重大なことを忘れていたッ!
紀奈と結婚したら桜橋グループを継がなければならないんだ
「そういえば、なんでヨシノさんは継がないんですか?」
「わたしばかだから…紀奈みたいになんでもできる子じゃないの」
ヨシノさんが足を止める
ボクも足を止める
前を見たら赤信号だった
「私ね、普通の女の子として生きていきたいの」
そっか…この人も紀奈と同じように豪華な生活をしてきたのか
「小さい頃から、親とろくに話をしてこなかったから、父様も母様も私に継がせようなんてこれっぽっちも思っちゃいないわ」
信号が青にありボク等は再び歩き出す
「ヨシノさんは、コレでよかったんですか」
「うん」
一拍置いてヨシノさんは答えた
「自由に生きたいの。自己中だけどね。
でも、誰にも縛られたくない…
私のせいで次女の紀奈が継がなくちゃいけないから、罪悪感はあるんだけど…
私がこの仕事ついてからはね、
紀奈に目の上のたんこぶみたいに扱われちゃってて
そりゃそうよね、面倒くさいこと押し付けてるんだもん」
紀奈よりも細い腕がカタカタと揺れる