恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
序章「キセキの出逢い」
“キセキ”なんて滅多に起こらない

いや、ゼッタイ起こるはずないって、

あたしはずうっと思ってた……、

そう、あなたに出逢うまでは―――――



その日は映画が1本1000円で見られる“レディースデイ”ということもあって、あたしは恋愛映画を2本たて続けて見ていた。


さすがに4時間以上も座りっぱなしだと、おしりもシビれて(?)、すでに感覚がなくなっていて、あたしは下半身に違和感を感じながらも、ゆっくりめの足取りで2冊のパンフレットを手に映画館をあとにした。


外はもう夜だった。


前に九州の従姉妹が遊びにきたとき…、

「東京って夜が早かとねぇ」

…って驚いてたけど、冬の東京は夕方5時台にはすっかり暗くなっている。

あたし的にはこれが当たり前なんだけどね。



近道をしようと、転々と屋外灯のともる公園を歩いていると、なにやら、この世のありとあらゆるものにおねだりするような、なんとも甘ったるい声が耳に流れ込んできた。
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