恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~

      ×      ×      ×



体育館の壁の大時計の針が、あとちょっとで12時30分を指し示そうとしたとき……、


「ハァーイ、みんなメシにするよ、メシぃ」


ウチの高校の女子バレー部主将・3年生のあゆみセンパイのひと声で、ようやく午前中の練習が終わった。


「お疲れサマですっ。お疲れサマですっ」


あたしは汗ビッショリのセンパイ方へ、ひとりひとりタオルを配って歩く。もちろんどれが誰のタオルだか熟知してるから、まちがって他のヒトのを渡すことなんてない。

……って、あたしのやってること、なんかマネージャーみたいだけど、断じてあたしはマネージャーじゃない。

この春、入部したばかりの1年生だけど、れっきとした選手……のつもり。まだ一度も試合なんてしたことないけど……。


「わんこ、サンキュ。タオル配り終わったら、なんか冷たいモノ買ってきて?」

「ハイ、真澄センパイっ。飲み物、なにがいいですかっ?」

< 11 / 205 >

この作品をシェア

pagetop