恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~
「炭酸系のヤツ。ア……でもノンカロリーじゃないとダメだから」

「わんこ、あたしもノンカロリーの炭酸系」

「あたしもっ」

「あたしもね、わんこ」

直子センパイ、真紀センパイ、絵理センパイからも立て続けに飲み物のオーダーが入る。

「あたしは100%のオレンジジュース」

「ハイ、久美センパイっ」

「わんこ、あたしはお茶系にして」

「ハイ、あゆみセンパイっ」

そのあとも何人かのセンパイ方からのオーダーを受けたあたしは、ひとりで飲み物の調達に出掛けた。


いつの頃からだろう、センパイたちから「わんこ」と呼ばれるようになったのは? 今じゃ、クラスのみんなまでもが、あたしのことを「わんこ」と呼ぶようになってた。

でも、あたしの名前は「わんこ」じゃない。

あたしの名前は犬塚一子(イヌヅカ・イチコ)、この春、高校に入学したばかりの15歳。

それなのに「わんこ」と呼ばれるのは名字が“犬塚”で“いぬ”が入ってるから、それに名前が“一子”だから 数字の“1”を英語で“one(ワン)”っていうからだ。


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