恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~


心臓が止まりそうなくらいビックリしたあたしが、首をすくませて振り向きながら、頭の上を見上げると、そこには左目に“眼帯”をしたイケメンの顔があった。


「あ、あなた、あのときの……」


「……って、誰かと思ったら、そーいうお前はあんときのねこアレルギーオンナ」

こないだはちょっとホスト風の高級そうなスーツを着てたけど、今日はGパンにカジュアルな感じの薄い春モノのジャケット姿だ。

それにしても、このヒト、いつの間に!? 足音なんて全然聞こえなかった……。

このヒトは忍者? それとも、ねこ?


「うぇ~んっ!」


あたしはそのヒトがどこの誰だか知らない。

もちろん名前も。

だけど顔は知ってる。

たぶん……多分、ひとりぼっちで心細かったあたしは、知ってるヒトの顔を見て、ひどく安心してしまったんだろうと思う。

気がつくと、そのヒトの胸に飛び込んでた。

けど別に誰でもよかったわけじゃない―――

< 62 / 205 >

この作品をシェア

pagetop