Heaven


ひどい脱力感に襲われた。
握りしめていた枕を持つ手が徐々にゆるくなっていく。


『…理由は?』


なぜ返事をくれなかったのだろうか?
ヒカルはなぜさくらを振ったのだろうか?
さくらはこんなにもヒカルを想っているのに…
このまま一生想いが届かないなんて、残酷過ぎる。


『理由もなかったよ。でも電話の最後にね?俺のこと嫌いにならないでって言われたの。嫌いになることなんか出来ないのにね。笑っちゃうよ…』


さくらはこう言って、
にこりと笑う。
泣き顔なのに、でもさくらのその笑顔は幸せで溢れているように見えた。

《嫌いにならないで》

ヒカルがさくらに言った言葉。
その意味を知りたい、と思った。
どういう意味を持って言ったのか。

理由がなくては、こんなこと言えるはずがない。
ヒカルは頭がいい。
だけど俺と一緒で…
恋愛には不器用だったんだ。

誰だってそう。
恋愛を器用に出来る人などいない。

ヒカルは、
俺が思っていたより、
ずっと、ずっと、
不器用だった─…



< 132 / 424 >

この作品をシェア

pagetop