蜜愛
時々、父さんのことを燿さん、燿さんと呼びながら夕飯の支度を整えて台所に立つ若い女の人にも、何度か会った。

僕はその人の事を好きにも嫌いにもなれず、ただ

『すいません、僕あんまり食べないけど美味しくないとかじゃないです』

と、二、三度料理に手をつけたら自分の部屋に戻ってしまう事が多かったから、

なんとなく父とその女性に気を使わせてしまったような感じがして

面倒になるというだけだった。


燿さんと呼ぶその女性にとって、僕の存在って結構アレかなぁ…なんて、

わかってきた頃から僕は、友達と用事があったからと嘘をつくようになった。

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