蜜愛
彼がまだ履いたままのトランクスをわたしが下げる。

指先で根元から彼の脈打つ血管をなぞって

先端まで届くと


ぬるんと人差し指がすべる。
続けて中指も。


そして彼がびくっと体を震わせた。


『すごい、初めて触った』


嘘ではなかった。

記憶を失くしてから初めて触った。

わたしにとっても、セイタが初めて。


そう思った。

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