ケータイ

レイジはちょっと考えてから切り出す。

「おじさんはまだサイトにいる?」

「わかんない。サイトで使ってる名前を変えたらわかんないし。やり取りの記録も何日かで消えるから」


「…おじさんはいつも同じホテル?」

「うん。同じ。ラブホにしては豪華でちょっと高いとこだよ」

「シャリエ、か?」

この界隈で人気のラブホだ。ラブホっぽくなくて女の子に人気のホテル。

「うん。いつも一番高い部屋。広くて壁が厚いって気にいってた」
「車で行ってたのか?」

「なんか白い高そうなやつだった。ベンツはいやなんだって。成金みたいだからって。国産の高いやつがいいって言ってた」

「…ナンバーは?」

「…覚えてないよ、そんなの」


レイジがちょっと声をあらげた。

「…凄い大事な事だ。なんで何も覚えてない?何回も車に乗っただろ?」

レイジはイラつきながらマキアートを飲んでいる。
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