ケータイ
レイジは約束の10分前には来る。いつもと変わらないちょっと下向き加減で気だるそうに歩いてくる。
真っ直ぐレナの所にきて、あらかじめ買っておいたマキアートをズズッと飲む。
「…ぬりぃ」
「お前、いつから来てんの?」
「…30分前」
「そんなに会いたかった?俺に」
さらりと言ってマキアートを飲むレイジにはかなわない。
「…なんでいきなり連絡なくなったの?ほら、協力するって言ったのに、いきなり連絡ないから、冷やかしかと思って」
レイジがデジカメをテーブルに置いた。
「いいから。みて」
中にはたくさんの白い車…。
「レイジ、これ…?」
「そ。バカな誰かの為に3日無駄にしたよ」
「シャリエに、出入りする車じゃん!これ」
「…しょうがないだろ。相手がわかんなきゃ進めていけないから」
「だからってこんな張り込みして…。私の為に」
「…それだけど。俺、確かに興味はあるけど、やっぱ報酬は欲しいね」
「…報酬?」
「…そうだね、レナのあの貯金でいいや」
レナの心は一気に鉛のように重くなった。けど、レイジにいて欲しい。助けて欲しい。
「いいよ。60万、レイジを雇う」
「…ありがと」