ケータイ


「…わかった。出てこい。直ぐに」

レイジからの呼び出しはいつもいきなりだ。

慌てていつもスタバ。
レイジのグラスは空。…待ってたよな。

気をきかせて「キャラメルマキアート」をもって席につく。


「遅い」


「…ごめんなさい」

キャラメルマキアートを勢いよく飲む。


「わかったぞ。名前」
「…」

「小柳勇三。まぁまぁの会社の社長。建築関係だ」

レイジはテーブルの上に数枚の写真を置く。
確かにアイツ!


「間違いないか?」

「間違いない。コイツだよ」

「幸い嫌な関係のヤツはいなかったよ。ヤツのワンマン会社だ。ただ羽振りはいい。今も女子高生の愛人がいる。ま、多分お前と同じ道を辿るがな」


強烈な腹立たしさ。
嫌悪感。

レナの身体から、血がひいていくのがわかる。


「おい、大丈夫か?」

遠くでレイジの声がする。


「レナ、どうした?」レイジが軽く頬を叩く。

「あ。ううん。平気」

「次はどうするんだっけ?」

レナはわざとテンション高めに言う。


「レナ、もう一度聞く。お前、どうしたい?」


「…小柳が捕まればいいのか。でもあいつはどうせたいした罪にならない。証拠もないしな。…お前だけが、辛い事を言って終わりもある」


「ならば、俺は進めない」

「お前にこれ以上、傷ついて欲しくない」

「レイジ…」



レイジはカラカラといつものクセ。

「勘違いすんなよ。同情、だかんな」

「今は、それで…。いいよ。レイジ」

「バーカ…」
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