√番外編作品集
霧島は何も言わず、体勢を立て直した。

小さく

黒沢くんは君にとって失いたくない人なんだね

と呟く声が俊彦だけに届いていた。

「お前言ってることめちゃくちゃだ。悲しい思いしたくないのに人殴って……殺すとか言うなよ」

「……うっさい!」

たとえ話だとは分かっていたが明らかに混乱しているのが分かり、一度冷静にさせた方がいい、と2人の距離を作った。

距離を開けたことがよかったのか、敦子は次の手には移らなかった。

「……敦子。そうだよ、気持ちは分かるけど霧島さんのせいじゃない」

敦子を落ち着かせようとそっと千恵も声をかけた。

こういう時は親友の言葉の方が説得力がある。

霧島は何も言わず、静かにガラスの瞳で敦子を見つめていた。

パタパタと、雨音だけが音を立てる。

「手分け……しようか」

やっと正常な時間が戻ってくる。

熱を帯びていた周囲の空気が浄化されたように冷えていく。

「黒沢君は北宮の南地区のライブハウスを回ってもらっていた」

霧島は、静かに折りたたんだ地図を広げると指で地図を指し、3人へ順番に視線を投げた。

「探索は2人1組にしよう。危険な探索はしないこと。何かあったら必ず連絡するように、いいかな」

俊彦は全体を見回す。

敦子と霧島を組ませるのは、彼が危険。

女同士で行かせるのも危険。

状況を考えて、敦子の手を引いた。
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