√番外編作品集
「もうッ……離してよ!」

敦子の声で雨の中ずっと手を引いていたことに気がついた。

人もまばらな夏の夜の商店街に、2人の黒い影が揺れて離れる。

商店街のアーケードの中に入りぬれた髪から軽く水気を払うと、俊彦は肩越しに敦子へ視線を投げた。

「とりあえずここの商店街の周りから調べるか。飯島? 聞いてる?」

「……別に、霧島さんのせいじゃないことくらい、分かってるよ」

少しふてくされた様子で突然切り出す。

あぁさっきのと言おうとすると、言葉を遮られた。

「でもあの場所であんなこと言って欲しくなかったの。だってまるで潤が」

「でもあれは彼なりの誠意なんだ。責められるべきが誰かって先に示しておきたかったんだろ」

「違うでしょ霧島さんだけの責任じゃないのに。1人でそうやって抱え込むの、よくない」

俊彦はその言葉を聞いてはいたが、返答はしなかった。

「あやまっとけよ? この一件落ち着いたら」

今度は敦子が返事を返さず

結局2人は無言のまま、潤が回ったライブハウスを塗りつぶすように再度探索した。

ぽたりぽたりと雨音の間隔が空くようになると北宮の端の住宅街の路地で、敦子は傘を閉じて空を見上げた。

「雨止むと少し涼しいですね」

「そうだな」

2人で北宮を徘徊しすでに数時間経とうとしていた。

「飯島、黒沢とイトコなんだっけ」

「そうですよ。でも血は全ッ然繋がってないんですけどね」
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