√番外編作品集
「私こんなことしてたくないのに。普通に学校行って潤とか千恵とか河田君とかと、楽しく毎日送れたらそれでよかったのに、どうしてこんなことになるの」

俯いていた顔がぱっと上がり、受け取ったケータイを敦子はぎゅっと握りしめた。

死の待ち受けの表示されたディスプレイに、雫が2、3粒落ちる。

壊れてしまえばいいとばかりに、力を込めていた。

「思い通りにいかないことばっかりなのは、しょうがない」

「堀口さんだってそうでしょ? 彼女さんがあんな目にあって、どうかしてるとしか思えないよ大事なものがどうしてこんな風に」

「でもなくなったものは取り戻せない、守れなかった自分を悔やむくらいしかできない」

俊彦はそこまで言うと、息を飲んだ。

「今俺たちは黒沢を捜してるんだ、まだ無くなったわけじゃないしまだ可能性があるからこうやってるんだ。
どうにもならないことを、その場でできないって喚くのは簡単だ。俺たちはもう歩き出してる。こうなったら走って走って走り抜くしかないだろ、違うか?」

「───違くない」

敦子はすぐ答えて、ポケットに入れていたヴィヴィアンのハンカチを取り出して涙を擦った。

「潤だったら、大丈夫だよね」

「大丈夫だろ、あいつなら」

「そうだよね、そうだよね。ありがと……探そっ、一刻も早く」

やっと敦子は笑った。

その笑顔に、俊彦は自分が思っていたよりずっと

ホッとしていた。

殴ったり、笑ったり、泣いたり……

こうして正論を唱えながらも虚勢を張っている自分に比べて

むしろ、彼女の行動は普通なのかもしれない。そう思えた。
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