√番外編作品集
渋谷景が飛び込みをした時に俊彦が見たあのコマ割りの景色

頭の中で何度も繰り返され

悪夢にうなされる日々が続き

笑顔すら浮かべられなくなった。

呪いの真実に気が付けなかった自分がふがいなくて

彼女を失ったことで途切れた心の繋がりを悔いてばかりで、子供のように泣くこともできなかった。


……いまさら、か……


俊彦は考えながら隣を歩く敦子に視線を投げた。

彼女の顔はもう笑ってはいない。

顔は引き締まっていて、蒸した周囲の空気に張り合おうと言わんばかりだ。

「黒沢は幸せものだな」

口にするつもりはなかったのに、自然に言葉がこぼれ落ちた。

「え? 潤? あんまり幸せとか興味なさそうにしてるよね」

そういう意味ではなかったのだが真意を問い返されても、今の俊彦には明確な答えを返せなかったので、曖昧な笑顔しか返せない。

「あいつにとっての幸せってなんだろうな。ずっと解けなかった問題が解けた瞬間、とか?」

「そうかも。あはは! さすが堀口さんもう潤のキャラ掴んでるね」

次のライブハウスも中を覗いたが、盛り上がりは最高潮という感じでどこを見回しても潤の姿は見れなかった。

「あのね、私はね、潤の一番の理解者になりたいの」

敦子はパンクロックの爆音の中で続けた。

俊彦の耳まで届いてはいないだろうが関係なかった。
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