√番外編作品集
だがグレンチェッカーには蔵持七海の姿はどこにもなかった。

彼は幻覚でも見ていたのか

それとも夢の中でも彼女を追っていたのか……


今だからこそ思う

彼はグレンチェッカーで、蔵持七海と会ったのではないかと。


その後発見された蔵持七海は、地下のライブハウスに閉じこめられて死んでいた。

閉鎖された空間に現れる蔵持七海。

彼のケータイには死の待ち受けが表示されていなかったが

あの状況下ならば、彼女が姿を現す条件は満たされている。

潤の元に現れてもおかしくないのだ。

「あそこで、グレンチェッカーで何があったんだ。」

「閉じこめられただけです。立て付けが悪かったんでしょうね。おかげで死にかけたけど」

潤は確信には触れなかった。

……別に、あそこで何があっても彼はもう元気なのだし、事件は終わったのだからどうでもいいことなのかもしれないが……

「あの時は、飯島がお前のこと泣いたり怒ったりしながら、心配してたよ」

「それは病室でも聞きましたよ。あいつ、大げさですみません」

「あいつ、お前のこと好きなんだな」

「って、言ってますね。でも俺にその気はありませんから」

潤は周囲を見回すと、エスカレーターそばのイスに腰掛けてカバンを置いた。

「下世話な話かもしれないけどお前、飯島と付き合ってたことがあるんだよな」

「中2の時に」

「一度別れると、二度はないタイプか?」

「別にそういう訳じゃないですけど、俺付き合うとかそういう制約重荷に感じるんですよ」

参考書を扇風機代わりにパタパタと仰ぎながら、潤はあくびをした。

「堀口さんは?」



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