√番外編作品集
「あ、飯島──ちょっといいか。お前、あの……黒沢が行方不明になった時、あいつのこと好きだって、言ったよな」

うん、と敦子は声もなく頷いた。

突然どうしたんだろうとそんな顔だった。

「でもあいつ、お前の気持ち……ちゃんと分かってるのか?」

小声で訴えてくる俊彦に敦子はきょとんとして、それから少し笑った。

こちらを気遣うような俊彦の態度がおかしかったのか、軽く手を振ると答えた。

「潤はよく分かってるんです。大丈夫」

「でもあいつ……お前のあんなに必死な気持ち。いくらあいつがマイペースだからって」

「堀口さん、心配性。私はそれより堀口さん心配なんですけど。あんなことあって、渋谷さんも亡くなってそれですぐ受験勉強なんて、実は堪えてるでしょ?」

「……何ともないと言ったら、そりゃウソになるけど」

「私とか千恵とか……多分潤もだけど、ちゃんと答えを見つけてまた踏み出してはいるけど、堀口さんはどうなのかなって私ずっと考えてたんだ」

黙してしまった俊彦を黙って見つめた。

俊彦の目は、黒くてとてもキレイだと敦子はずっと思っていた。

はじめて会ったのはいつだったんだろう、と考えるとすぐ思い出せた。


───森先輩が死んだ時だ。


あの時は意識が森真由美にしか向いておらず、彼にまともな挨拶もしなかった。

電話越しで会話したときも、ちゃんと彼を認識していなかった。

だけど今は、彼は困った顔をして自分とまっすぐ向き合っている。
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