アルタイル*キミと見上げた空【完】
もつれる糸

「おはよう、汐!昨日は楽しんで来た?」

「え??」


た、楽しむって、何を?


バシンっと肩を叩かれて思わず首をかしげる私を、凛はじっと見つめた。


「汐・・・・なんか、あった?」


「え?う、ううん。何にも・・・?」


「ふ~ん?」


「ほ、ほら、早く用意しないとみんな来ちゃうから」



慌てて体育館の鍵を開けようとする私の手元は、バカ正直者で、なかなか鍵穴に鍵を差し込むことができない。


「ほら」


そういって凛の手がにゅっと横から伸びてきたかと思うと、私の手から鍵を取っていともたやすく扉の鍵穴を回す。


「汐ちゃ~~ん?こうやってまわすんだよ?」


うぅ・・・怖い。


「汐ちゃんにしては珍しいよね。なんか・・・・あった?」


ニコニコしながら、凛の口元全然笑ってないし。


「え、えっと・・・・あの、その・・・・」



・・・・昨日の晩、しばらく、というか出来るだけ周りには気づかれないようにしたい、って私が言ったんだ。


大会前の大切な時期に、周りに心配かけさせたくないし。



けど、けど・・・



この凛の迫力に私いつまでもつんだろう・・・早速の不安。



< 245 / 640 >

この作品をシェア

pagetop