アルタイル*キミと見上げた空【完】
それまでどちらかというと、友達の中心にいた凱は、お母さんが亡くなってから学校ではほとんど話さなくなっていたこと・・・・。
「それを心配してね、弟・・・凱の父親は、凱の好きなもの。そして世界でひとつしかないものを彼の誕生日にプレゼントしてあげようとしてたんだ」
「それが・・・・これ・・・・?」
監督はうん、とうなずいて懐かしそうに、そして嬉しそうに私の手元のキーホルダーを見つめた。
「凱が好きだったもの・・・バスケと、そして・・・確か星だったな。なんで星なんだ?って凱の父親に聞いたんだ。そうしたら・・・・
『あいつの好きな子が好きなものなんだ』
って・・・・実はその時、もういつ引っ越してもいいような状況に仕事がなってたから、凱にひとつ大事な思い出もつくってやりたかったんだろうな・・・・仕事が終わってから、ずっとそれにかかりきりだった。」
「え?これ・・・凱のお父さんの・・・」
「そうだよ、手作りのものだ。凱の父親は、ジュエリー関係の仕事をしてたからね」
私は改めてボールを見つめた。すると・・・・
「あ・・・・ここ・・・・」
暗闇の中小さな電灯の光で、キラキラ光るそのボールのほんの目立たないところに・・・
「エス(S)・・・・・」
私がそうつぶやくと、監督は一瞬大きく目を見開いてから、納得したようににこっと笑った。
その目には涙を浮かべながら。