今日も、恋する電車。
電車は公共の場所なのに、誰もが自分の世界に入り込み、皆、素の顔になるので面白いなと茜は思った。
入り口近くに立っていた幼い3、4歳くらいの少年だけが、表情をくるくると変え、落ち着きなく視線をさまよわせる。


電車が激しく振動するたび、隣にいる保護者の母の手を両手でにぎりしめている。その少年の様子がかわいくて、ふっと茜は顔を緩めた。

毎日、電車の中で過ごす人を見るたびに、茜は思いを巡らすことがあった。

ほんのわずかなときとはいえ、同じ空間を過ごす人たち。


いつもなにげなくその時間を過ごしているが、今目の前に居る人とは、もう二度と会う事がないかもしれない。 
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