今日も、恋する電車。
茜は声をあげて思わず笑った。話もそうだが、すねたようにくちびるを尖らせる保の様子がおかしかったのだ。普段冷めたような表情が多い保にしては珍しい表情だった。

「うるさいなーお前だって、なんで陸上部はいったんだよ?」

「あたしは、えー。あー。あたしは、かの金メダリストにあこがれて、自分をほめたいと思ってね」

「お前それ、絶対嘘だろ」
保は茜の頬をつねる。

「いたっ。女の子に暴力払うなんて」

「うるーせー」
 そういいながらも保は笑っていた。楽しそうに笑う保に茜も嬉しくて笑った。保が自分を見て笑ってくれる、その事実が嬉しくてたまらなかった。


『二宮、二宮です』

無常なアナウンスに、保は茜から視線をそらし、外へ目をむけた。



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