今日も、恋する電車。

長いまつげに縁取られたおおきな茶色の目が、何度もぱちりぱちりとまばたきをする。


愛らしい唇に左手をあて、少女はピンク色の携帯をカバンからとりだし、熱心に右手の指を動かし始めた。

ごくりと、茜の隣からのどが鳴る音がした。横を向くと緊張した面持ちで保がじっと少女を凝視している。


少女が、この時間に電車に乗るようになったのは、つい一ヶ月ほど前である。


なのに、保は少女に心を奪われてしまったのだ。 


今、となりにいる茜の方を見ようとしない。
保のあまりに熱心な視線に、茜は顔をしかめて、下を向く。

手はいつのまにかスカートの端をぎゅっと強く握りしめ、こまかくふるえていた。

電車の振動にまぎれながら、小刻みに。

< 7 / 35 >

この作品をシェア

pagetop