エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「兄ちゃん!もしこの車を売るとしたらいくらなの?」

「これですか?…もし売るなら60ぐらいっすね。」
「60かー。」

「高いっすかね?車検入れたばっかだからお買い得ですよ!…あっ!もし売ればですけどね。」

ここから俺とオーナーは男同士の秘密の話しになった。

モチロン弥生に聞こえない様にだ。

「兄ちゃん‥これ寝れるの?」

俺がオーナーに耳打ちすると、すぐにオーナーはピンときて

「ハイ。もちろん!それもアメ車の醍醐味ですから。フルフラットシートで後ろが全部倒れるんすよね〜。ああ、でも残念ながら売り物じゃないので…。」

とかなり困った様子になったが、それでも俺は商談を止めない。

「走行距離は57000か。まあまあだな。燃費は?」

ふられるとついオーナーは答えてしまうようだ。

「燃費もアメ車にしては伸びますよ。だいたい7〜8ですね。でも高速なら10まで伸びますから!」

「ふぅ〜ん。でも代車なんだよね。せっかくキャッシュ用意してたけど仕方ない‥悪い!じゃ他あたるわ!おい!行くぞ。」

弥生の方に行こうとする俺の腕をオーナーはガッチリ掴んで

「お待ち下さい。お客さま!」

と初めて商売人の顔になって言った。


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