ことばのスケッチ
《三つ先の駅で降りるんだったら、あのとき何も先を競って座席を確保しなくても、僅か十分だから、それに若いんだから。いけないいけない。年より根性を出しちゃ。まだ一時間も電車に乗れるんだ。若者はたったの十分しか電車に乗れないんだからね。あのチャンスを逃したら若者は座れないのは確実だから。私はまだまだチャンスはある。そう思はなくっちゃ。それにしても、隣りの吊革の女性が、どうぞって言ってくれると思っていたね。いけないね。そんな気持ちじゃ。哀れみを丸出ししたんじゃ。私の歳からしてみれば、彼女は三分の一だろう。老い先短いんだから。これから私の三倍も生きなければならない人に席を譲らなきゃ。そう思はなくちゃ。哀れみを感じさせなかったことに誇りを持たなきゃね》