ことばのスケッチ
「おい、今度は本当に泣き出したよ」
「きっと、眠り足りないんだわ」
「ちょっと抱っこしてやった方がいいんじゃない」
「そうね、あまり泣かせると感の虫がでるからね」
　我慢の限界を超えたためか、いい匂いのするところに押し当てられても、いらいらする気持ちが治まらない。なんだかむしゃくしゃする気持ちが治まらない。
「ごめんね」
「なかなか泣き止まないな」
「これからは、泣き声を聞き分けなきゃ」
　いい匂いのするところに顔を押し当てても、この気持ちが治まらない。体を反らせてもがいても、この気持ちどうしようもない。手足を思いっきり動かしても治まらない。一体この気持ちは何だろう。自分で自分の気持ちをどうすることもできなくなって、「ギャーギャー」と自分の気持ちを思い切り発散した。気持ちを発散したためか、だんだん気持ちが落ち着いてきた。気持ちが落ち着いたら、いい匂いがして、程よい暖かさが体に伝わり、ゆらりゆらり体が揺れている。そのうち、いい匂いも、暖かさもすーと身体の中に溶け込んで、何時の間にか遠くへ行った。
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表紙・目次

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