ことばのスケッチ
「どうも、ご馳走さまでした」と言って発車する。車の中で、
「京子さんですらそう思うんだ」と、早苗が言う。
「そうかも知れないね、年寄りを先に乗せるのが常識かもね」
「見方によっては、逆の結果になることがあるんだよね」と、早苗は頷くように言った。
「この場においては、京子さんにとって、我々はあの家主と同じに見えたんじゃないかな」
「貴方らしい考えね」
 その夜遅くになって、家に着いた。何時ものように、母は自分の布団を押入れから出し、自分の巣づくりをする。早苗と話しあって、布団の上げ下ろしは自分でさせるようにした。曲った腰で布団の上げ下ろしをするのは長時間かかって面倒ではあるが、母の気兼ねを和らげるためにも多少の仕事を母に与え、そして適度の運動をさせるようにした。その代わり、転んで怪我をしないかと、傍らに立ってそれとなく見守るのである。
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