ことばのスケッチ
母の誕生日に、兄弟や孫達を招待してパーティーを開くようにしている。年に一度、皆の顔を見せてやりたいという、私と早苗との計らいである。大勢の子供や曾孫に取り囲まれて、この日の母は満足気である。中にはこの時にしか合わない者も居る。母を取り囲んで、食べ物を口に運び、次にどれが食べたいかを聞き、母が手を伸ばせば、すかさずその先を見極め、下にも置かないもてなしをする。その様からは、純粋さを包み隠した非純粋さが目に付く。やがて酒宴もこと覚めて、近くに住む者は帰り、遠くの者は我が家に泊まる。残った者は相変わらず、母を取り囲んでいた。時間は何時の間にか過ぎていた。早苗は客布団を押入れから出し、隣の部屋に敷いた。母はいつものように、よっこらしょと腰をあげ、曲がった腰で押入れから布団を引き摺り下ろし、自分の巣づくりを始めた。早苗はいつものように傍らに立って、その様子を見ていた。
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