苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「ああ、このドレス、可愛いでしょう?」

昔も今も、私の仏頂面は母の網膜には届いて無いみたい。
羨ましいほど幸せな人。

「……ええ」

さすがのキョウも、曖昧な相槌しか打てないみたい。

「私、百合亜ちゃんが生まれる前に買っておいたの。
 7歳って言ったら、七五三でしょう?
 だからね、きっとこのドレスが似合う女の子に育ってるって信じてね」

……だから、時代遅れのデザインの上、私にサイズがあってないんだってばっ。

「それはそれは。
 ユリアさんに対する愛を感じます」

「そうよね?」

キョウの言葉に、すっかり気を良くした母。

……もう、うんざり。
そういう私が生まれる前にママの妄想だけで購入した服が、後、何着あることやら。


「紅茶、冷めたから入れなおしてくるね」

私はティーポットを持って席を外すことにした。


後3時間くらい戻ってこなくたって、きっと、この二人、私の不在に気づかないに違いないもの。


Fin.
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