苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

・看病

日が暮れても、龍星が帰ってこないことを心配した毬は、勢い余って内裏まで来てしまった。
実際、過労で疲れたのか龍星は、内裏で倒れて寝込んでいたのだ。

「あら、毬。
よく分かったわね。
使いを出そうと思っていたのよ?」

姉である千は、裏口から尋ねた毬を見て、涼しい顔でそう言った。

「龍は?」

「こちらよ」

導かれるがままに部屋に行くと、すぐ近くで帝にすれ違った。
帝は獲物でも見つけたかのような鋭い眼差しを毬におくると、進路を邪魔するかのように立ちはだかる。

「おや、これはこれは妹君。どうされました?」

柔らかい口調には冗談めいた色が焚き染められている。が、その瞳が鋭いので、毬は思わず視線を逸らす。

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