苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

・おぼれた男2(09.05.22)

君におぼれた哀れな男で5のお題

2.何よりも愛しい君をゆるやかな鎖でつなぎ止め、広い檻に閉じ込めよう。


「龍ーっ」

庭で、毬の声がした。
安倍龍星は、目を通していた書物を放り投げるかのように立ち上がる。

「どうした?
 ま……っ」

庭を見た途端、龍星は言葉を失った。

いつぞや彼女は庭を猫で埋め尽くしたことがあるが、……悪夢再来。
とはいえ、あの時ほど膨大な数の猫ではない。

まだ、その数10匹。

「勝手に呪を唱えてはいけないと、言わなかったっけ?」

「と、唱えてないもんっ」

ごろごろにゃーと、愛くるしい猫に足元に擦り寄られている毬は、思わず唇を尖らせる。
けれども、説得力のないことに彼女の手には例の書物が握り締められていた。

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