苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
龍星が見る限り、これ以上猫が増える様子はなかったが、毬はもう、あの時のことを思い出しておびえているのだ。

冷静に状況を判断できないのだろう。

「龍ーっ」

いつも、強気でおてんばな彼女が、泣き出しそうに眉間に皺を寄せて、自分を頼ってくる様が、愛しくて仕方が無い。

いつまでもその顔を眺めていたくて、つい、黙っていたら、毬に名前を呼ばれた。

「お願いっ。
 私、これをただ眺めていただけなの。
 口になんて出してなくてっ」

よほど反省しているのだろう。
瞳にはうっすらと涙まで溜まっている。

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