苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「私のこと、本当は嫌いなんじゃないですか?」

冗談なのかもしれないけれど、潤んだ瞳でそう囁くように言われると、まるで大雅を傷つけてしまったような罪悪感に襲われてしまう。

「そ、そんなわけないじゃないっ」

そんなわけ、ないけど。
キスとか、そのもっと先とか。
そういう、オトナの恋愛って、まだ、ちょっと苦手。

なんていうか、慣れないんだもん。

……変かな?

「ごめんね、大雅。
私、頑張るから……」

大雅は困ったように眉根を寄せた。

「こういうのは、頑張るものじゃないんです。
もう少し、都さんが大人になるまで待っておくから、そんな顔で謝らないで」

大雅は痛む体を押して起き上がる。

「……治ったら、思いっきり抱きしめてもいいですか?」

一瞬、私を抱きしめようとした後、思いとどまったのか、熱を帯びた声でそう囁くから。

さすがの私もいやともいえず、こくりと頷いてしまう。

「じゃあ、そのとき、都さんがインフルエンザだと困るから、やっぱり今日は外に出ていてもらえませんか?」

「大丈夫だもん!私、インフルエンザの予防接種受けてるしっ」

言い終わる前に、大雅が手を伸ばしてきた。

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