苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「こっちに、おいで」

バランスを崩したからだが、その腕に抱き寄せられる。
強引に起き上がって、私の身体を全てベッドに持って上がるくらいの力はあったみたい。

私は大雅の腕の中で、猫のように丸くなる。
酷く熱くて、汗っぽい。

でも、不思議と嫌な気はしなかった。

「早く良くなってね、大雅」

「……良くなっても、こうやって一緒に寝てくれます?」

……ズルイ。

「これ以上、何もしないって約束してくれたら、いいよ?」

「都さんはいつも、無理難題ばかり押し付けますねぇ」

大雅のため息も、熱を帯びている。

「分かりました、約束します」

「じゃあ、一緒に寝てあげる」

移ったら困るから、と。
大雅はその手を放す。

私は、傍に居て看病できないお詫びのつもりで、一度だけそっと、頬に唇を落とした。

大雅の瞳が、それだけでふわりと笑うのが、とても嬉しくて。

こんな看病なら、たまにはしてあげてもいいかな、なんて思いながら部屋を出る。

そこには心配そうな清水が居て、もう一度、「うがい手洗い」を強要されたのだった……。

Fin.

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