苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「失礼します」

家庭科室に漂いかけた淫靡ともいえる空気は、からりとした子供の声に破られた。
清水はほっと息をつき、振り向いた。

視線をあわせた八色都が無邪気に笑う。邸ではいつも、年不相応の大人っぽい表情で居ることが多いので、彼女が子供らしく振舞えることが知れただけでも、ここで臨時教師をやったかいがあるというものだ、と清水は密かに思っていた。


「清水先生、明日の準備、出来ました」

慣れない敬称と言葉遣いにくすぐったさを覚える。もっとも、それは口にしている都も一緒なのだろう。

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