チェンジ‐ため息の行方
 そんなある日、突然に小杉の妻である亜弥が言った。
「ねえ、あなた。紗依の左手の薬指の間に珍しいホクロがあるのよ。あなた知ってた?」
 と亜弥は伸びた子供の爪を切りながらそう小杉に聞いた。

「えっ!?薬指の間にホクロだって?どれどれ」
 と小杉は言うと先ほどまで読んでいた新聞を元通りに丁寧に畳むと、亜弥と紗依のもとへと歩いて行った。

「紗依ちゃーん。ママに爪を切って貰っていたんですかあー。良かったですねえー。って、どれどれ。ホクロだって?」
 と小杉は言うと子供の指の間を開いてそのホクロとやらをじっと見つめた。

「ほら、斜めに三つ並んでいるでしょう?確か生まれたばかりの頃の紗依の指にはこんなホクロなんてなかったのよ。それとも急に突然変異的にホクロが出来たのかしらね?」
 と亜弥は不思議そうに言った。
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