チェンジ‐ため息の行方
第4章-交差
「義姉さんこんにちは。花音は元気?」
 と萌香にそう声をかけたこの男の名前は、早乙女尚人(さおとめ なおと)28歳である。つまりは萌香の旦那さんである雄大(ゆうだい)の弟だ。

 尚人は大学時代、学生にしては異色のバイトである某探偵社で働いていた。
そしてその時に探偵の仕事に魅力を感じた尚人はとうとう大学卒業後自分で某探偵社を興した。そして今日は義姉の萌香の依頼で実家の母屋の隣に建てられたこの雄大の家を訪れた。

 ちなみにこの尚人は小さい頃から厳格な父親と教育熱心な母親の二人に常に抑圧されて生きてきた。だがある時期から尚人の学力が伸びなくなり、ことごとく尚人が両親に反抗的になるにつれ、両親の愛情は尚人をスルーして兄の雄大オンリーになった。

 この事に尚人は納得がいかなかった。子供の学力の限界を把握しようともせず、更に子供の反抗期さえもきちんと受け止めようとしなかった両親。その挙げ句が自分に対する二人のその後の無視に近い態度だった。
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