チェンジ‐ため息の行方
 だが両親にして見れば長男である雄大が常に成績が優秀で、しかも反抗期に於いてさえ標準以上に反抗的にもならずに温和な性格だったのに対して、次男の尚人は少し神経質な性格故か、だいぶ両親が戸惑う程の反抗を繰り返した。

 しかもそれは反抗期をだいぶ過ぎてもあまり変わらなかったので、次第に二人は次男に対しての接し方に戸惑いを覚えた。

 そして両親と次男である尚人との微妙な心の距離はその時期を境に、そのまま修復されずに益々開いていった。

 次第に尚人が成長するにつれその両親の自分に対する腫れ物にでも触るようなその接し方が勘にさわり、やがて元来何かにつけて不器用な性格の尚人の心をじわじわと苦しめていった。

 その挙句尚人の心の中には両親に対してではなく、何故か?兄雄大に対する競争心や憎しみへと屈曲して歪んだ形で持って大きく膨らんでいった。

 それが具体的に形に現れ始めたのは、まず父親が自分の会社の一つを継ぐようにと打診した時に尚人はその申し出をスンナリと断り、勝手に大学時代に仲の良かった友達数人と自ら探偵社を興した事だった。
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