流星
一人暮らしを始めて一週間。
大学の頃から一人暮らしだったから、別に今さら戸惑いとかはない。
住んでいるアパートも、市営住宅だから値段のわりに結構広いし、充実してる。
隣人への挨拶も済ませた。
母がうるさいから、一応真下に住んでいる人には「ご迷惑をかけるかもしれません」と最初に謝っておくことを忘れずに。
…なぜか左隣の家だけずっと留守だが。
「ま、すぐ帰ってくるだろ」
呟いたちょうどその時、隣からガチャンという扉の閉まる音が響いた。
……本当に帰ってきた、マジかよ。
時刻は夜7時過ぎ。
まだ寝るには早すぎるよな?
今行っても大丈夫だよな?
「っし、行くか」
重い腰を上げ、読んでいた雑誌をベッドに投げ捨て、1つの菓子折りを掴む。
菓子折りは全て母が用意したものだ。
母が言ってくれなかったら、俺は隣人への挨拶なんかしていなかっただろう。