“俺様”大家の王国




「……何がだし」

ミエロは、顔を叛けてぼそっと呟いた。

「だから、歌」

奈央が答えると、ミエロは驚いて彼女を見た。

「世の中には、もっとド下手なのに気付かずに、歌を披露してる恥ずかしい人達は、五万といますよ」

「るせー。そういうのと比べんなよ。俺はプロだぞ」

「だから、プロの中で、って話です。

さっき言ってた『フラワーガール』みたいなのが、その『五万』で……」

ミエロは、変な人だ。

ナルシストっぽいのに、現にその手の発言を多々繰り返しているのに、

それでも自分の中に、こんなにも肯定出来ない部分を抱えている。


肯定できない部分を……。


(ちょっと、私と似てるかもしんないな……)


ミエロは体操座りになって、片手で顔を隠していた。

もう片方の手は、鍵盤を弾くように床の上でかちかち踊っていた。動揺しているらしい。


「良い声じゃないですか。爽やかで」


猫かぶってんのかって思うくらい、と付け加えるのをやめたら、ミエロの顔はますます赤くなった。


……何だか面白くなってきた。



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