“俺様”大家の王国



「………?」

「……分かんない」

「? ? ?」
 
小林君は、背中をこちらに向けたまま、答えた。


「……俺ね、記憶が無いんだ。

子供の頃の。

……ん? 違うな。

何年か前まで、って言った方が正しいかな」


「えっと、それって……」
 
覚悟を決めていないというのに、いきなり重い過去の話が始まった。


「俺ね、拾われっ子なの。

雨の日に、岩井さんっていう今の上司に拾われたんだ。

それこそ不良が捨てられてる小犬拾うんみたいに。

ベタでしょ。

でも、それより前の事って、覚えてないんだ。


この歳までどこで何してたんだか、本当は何て言う名前なのかも……」


 
それが、一月だった。
 

そして、たまたま近くにあった段ボールに、『サトイモのこばやし』と書いてあったので、

彼を拾った岩井は、躊躇わずに彼に『小林一月』と名付けた。


「で、今は名探偵やってまーす。イエーイ」



< 442 / 534 >

この作品をシェア

pagetop