彼女が寝ている部屋の前に着き、僕は暫し目を伏せて間をもってから、微かに開いているそこに手をかけた。

真っ暗だった部屋が、障子を開けたことで入ってきた廊下の灯りの所為で、少しばかり、明るくなる。

部屋の中を見渡すと、布団がしかれている場所とは正反対の窓際に、少女がうずくまっていた。

目を見開き、何かあったのだろうかと歩調が早まるのを自覚しつつ近づく。
少女のすぐ傍にしゃがみこみ、腕で隠された顔を覗きこんだ。


長い睫毛が伏せられていて、微かに寝息が聞こえた。

それにほっと胸を撫で下ろし、こんなところで何も被らずに寝ているのでは風邪をひいてしまう、と少女を布団へと運ぶべく、うずくまる少女を抱き上げた。


予想以上に軽いその体に、妙に胸が騒ぐ。
華奢、といえばまだ柔らかな表現だが、……これは。


僕は眉間に皺を寄せ、だらりと垂れる少女の腕を肩の上に置き、布団へと向かった。
起こさないように、そっと柔らかな布団の上に少女を下ろす。

穏やかな寝顔が、枕に沈む。


その時、閉じていた少女の眼が見開かれた。

深い藍色の瞳に、僕の顔が映る。



「ああぁあぁああぁああぁあ!!!!」


少女の絶叫に、空気が揺れた。



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