思わず、驚きで、一瞬息を止める。
しかしすぐに吾にかえり、地に横になる彼女の傍にしゃがみこみ、片手で上半身を支えて上げ、顔を上へと向かせた。

しばらく宙をさまよっていたうつろな目は、僕をとらえると一瞬鋭い光を持った。

その目に胸を貫かれて、ぐっと眉間にしわが寄る。


―死にたいと、叫ぶのよ。

千代の言葉が頭の中でこだまして、唇をかんだ。


いまの彼女の状態はまさに、その言葉をあらわしているようで。鋭い眼は、僕への強い拒絶に感ぜられた。

彼女の背を支える手が、体温に触れているはずなのに、だんだんと冷えて行くのを感じる。
一度目を瞑ったあと、再度、彼女の顔を見た。


すると、彼女は一瞬目を細めて眉間に深くしわを寄せ、かさかさの唇をかすかに動かした。

薄い唇に耳を近づけると、わずかな風にさえかき消されてしまいそうな、か細い声が聞こえた。



「…みず」



……それは、死を求めていた彼女が初めて示した、生への願望だった。




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